



職業=小林裕高。
アパレル、ドローン撮影、観光関係のライター、マルシェ屋台製作、ボードゲームのイベント開催、にかほ市の地域おこし協力隊と多岐に渡る業務を行っている小林さんにお話を伺います。
秋田県が大好きだからその魅力を発信
小林裕高さんは秋田県井川町出身、最近話題のパラレルキャリア型個人事業主です。地域おこし協力隊をしながら、多様な働き方をしている小林さんは、赤いキャミソールをトレードマークにした2人組パフォーマー「キャミソウルブラザーズ」としての活動も盛んで、お祭りや婚活、ライブなどでもステージに立つことが増えており、地元では「赤い人」と印象的な代名詞が通じるほどです。「じゃあ、港行きましょっか!」と、軽快な足取りで絶好の撮影スポットに案内してくれた小林さんにカメラを向けるとポージングもバッチリです。
職業=小林裕高。このような生き方はまだまだ馴染みが薄いのですが、小林さんの場合「秋田県大好きな個人広告代理店」と例えると解りやすいかもしれません。これといった理由はなく、ただただ純粋に「秋田県が大好き」。好きだから秋田県に関わること自体が楽しいのです。「何もない」と言われることが悔しくてはじめた秋田自慢のSNSも今では大事な仕事の一つになっています。日々、秋田県の情報発信、みんなで楽しむための機会づくり、盛り上げることを考え形にしています。

ターニングポイント~新しい世界への入り口~
明るく気さく、ステージでも活躍する小林さんですが、子どものころは相手との距離感が難しい時期があったといいます。その頃から「相手がどう感じるのか」「どう見られているのか」を意識し「人間観察」をするようになりました。大人になった今も“なんとかなる”と、好奇心に従って新しいことに次々挑戦できるのも、この時の経験が糧になっています。
3人兄弟の末っ子、おさがりの服で育った小林さんは「新しい服」に憧れ秋田市内のアパレルの仕事につきました。仕事は楽しく、手応えを感じていましたが、30歳頃から将来へ漠然とした不安を感じ始めました。2012年、スポーツバーへ出かけたことが大きな転機となります。サッカーW杯開催中でパブリックビューイングが盛んな時でした。みんなで応援する楽しさ、場を盛り上げるおもしろさに目覚めます。また、お客様と販売員という仕事上の人間関係とは異なる、人と人とでつながる仲間との出会いにも刺激を受けました。他人の目線を気にしたり、過去を気にするよりも、自分の人生を楽しもうと、考え方にも変化が現れました。「人を楽しませることが自分の喜び」と気付き、2013年にはパフォーマーデビュー、イベントプロデュースをしながら、ついにアパレル業界から脱サラします。
業務委託型の地域おこし協力隊!?
2017年2月から3年間仙北市、2020年4月からにかほ市へ移住し、地域おこし協力隊を務めています。「協力隊=任期終了後はその地に定住」のイメージが強いため「仙北市を離れてまた?」と疑問を持つ方がいるかもしれません。現在の地域おこし協力隊は業務体系も、任期後の関わり方も多様化しているのです。小林さんの場合は業務委託契約のスタイルで市は取引先の一つです。「もっと大きなくくりで、“秋田県の協力隊”と思ってもらえたら。」ご自身のことを実にわかりやすく例えてくれました。
情熱家である一方「共に課題解決をするパートナー」と経営者としての冷静な一面もあります。小林さんは「地域で埋もれている人財の掘り起こしや、市と住民間の橋渡し的な存在として動ければ」と考えています。「他の誰かがやるよりは、自分がやった方がきっと面白いことができる」自負を持って業務に望んでいますが、状況を判断し表舞台に出る必要があれば出るし、適任がいれば引く。常に客観的な視点でお客様にとっての最善を模索します。

にかほ市を選んだ理由は業務内容もさることながら「海沿いに住んでみたかった」と環境にも強く惹かれたと言います。「海と山の間にある九十九島の農道が好き」と秘密基地をこっそり教える少年のように、特にお気に入りの場所を誇らしげに教えてくれました。
「おもてなし」の小林マジック
一度繋がったご縁を繋ぎ続けられる小林さん。前任地・仙北市役所の職員のみなさんとは今も月に1回飲みに行っており「この人面白いから」と推薦をしてもらえるほど良好な関係が続いています。秘訣は小林さんの鋭い「観察力」と「想像力」にありました。瞬時に相手が望むこと、楽しいことを探り、そこに「編集」を加えることで小林さんは「期待以上」を届けます。1を聞いて10を知る-そんな対応をされたら「また是非」「うちでもお願いしたい」とファンが増えるのは当然です。一度関わると、忘れられなくなる。そんな魅力を持っています。

数ヶ月先まで予定びっしりと多忙な中にでも軽やかに新たなご縁を広げています。「傷つきたくないから」と、自身の人付き合いを “浅く広く”と言う小林さんの主語はいつも自分。誰かを責める可能性がある言葉を使いません。人の痛みを知っているからこそ、できることがあるのかもしれない。比べられる辛さを知っているから、比べることもないのです。思慮深く、優しさが滲みます。
“誤解されることが多そう”だという予想は、話を聞けば聞くほど確信に変わりました。そのくらい相手のことを考え抜いた、言葉通り裏表なしの「おもてなし」の人。取材を終えたお昼時、「僕が食べたいんで、ラーメン、付き合ってもらってもいいですか?」さらりと誘う小林さんがまた自然すぎて、解っていてもなんだかズルい!と思ったのも確かです。この絶妙なバランスが小林マジック。